あなたとホワイトウェディングを夢みて
これまでの留美への態度を考えれば、流石に嘘でも『愛情』とは言えなかった。それに、今の雰囲気の流れからも『愛情』ではあまりにも胡散臭いし、信じては貰えない。
もし、どうしても必要ならペットショップにいる可愛い仔犬たちに『愛している』と言った方がマシだと、ちょっと偏屈になる。
「専務の世界ではそうなんですね」
またもや留美の郁未を蔑むような物言いだ。きっとまたいつもの冷静で冷たい瞳をしているのだろうと留美の顔を見ると、これまでの留美とは想像も付かない程に恥じらった表情を見せていた。
「言い方が悪かったよ」
留美は言葉ほど郁未を嫌って怒っている様子はない。ならば、折角留美の表情がほんのりピンク色に染まっている今、もう少し友好的に話して距離を縮める事ができるかも知れないと、郁未は少し期待をして優しく言う。
今日も相変わらずの戦闘服のような、黒一色で固めたスーツ姿だが。ひとたび脱げば、昨夜のような一風変わった姿に変身する。留美も一人の女なのだと頭に思い描き、郁未は歯が浮くようなセリフを言ってみた。
「昨日は君がとても可愛かったからキスしたんだ」
一応それらしいセリフを言ったつもりの郁未だが、そこで、留美が引いてしまう。
「ジャージ姿の化粧っ気なしのすっぴんがですか? しかも、ハバネロの所為でタラコ唇でしたよ?」