あなたとホワイトウェディングを夢みて
留美を抱きかかえたまま部屋へ入った郁未は、ソファの前で留美を下ろした。
女性との戯れに慣れているとは言え、こんな風に抱えたのは初めてだと、郁未は頭の中でそんな考えを巡らせていた。
すると留美が不機嫌そうな顔で突っかかる。
「誰もあんなことして欲しいなんて言っていませんけど」
文句を言う割には、留美の頬は随分と赤く染まり目は郁未から逸らしている。明らかに、厭味な口調に反し本人は意識している。
これはチャンス到来だ。留美を口説く絶好のタイミングだ。なのに、調子が狂う郁未は余計なセリフを喋ってしまう。
「もう少し痩せた方が良いぞ。健康的にもあと五キロは」
すると留美がバッとソファから立ち上がり、思いっきり郁未の頬を叩いた。
「あなたってどうしてそんなにデリカシーがないの? 言って良いことと悪いことの分別も付かないの?!」
いきなり怒鳴った留美。だが、生まれて初めて女に頬を叩かれた郁未は呆然となる。女の柔らかな手の平が、これほど頬に衝撃を与えるとは思わなく、郁未は頬に手を当てその痛みを感じ取っている。
郁未の予想にもしない行動に留美もまた呆気に取られる。すると、郁未が冷静な口調で言う。
「専務に対して暴力を振るったな」
「じゃあ昨日のセクハラは許せる行為なんですか?」
郁未の行き過ぎた行動に抵抗したのが暴力ならば、昨日のキスはセクハラ以外の何物でもないと言い返す。すると、今度も郁未の予想外のセリフが飛んでくる。
「昨日のキスは友情の証しなんだが」