狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
次の朝。

「おはよっ、大丈夫かい?」
体格の良い看護士のオバチャンに、揺り起こされて目が覚めた。

「うわっ!は、ハイ、元気ですっ」
そうか、ここは病院だ。
私は慌ててベッドからおりた。

「イヤァ、昨夜のカレシ?……いいオトコだねぇ~」
オバチャンポーズで、“コノコノ”っと肘でぐいぐい押してくる。

「イテテッ。あのね、私は病人でして…
それに違いますよ、あの人は。
単なる職場の上司です」

「あ、そう?」

看護士サンは唇に人差し指を充てて、天井を見上げた。

「…でも帰り際に……ま、いいか」
「?」
何かいいかけた看護士サンは、忙しそうに自分の仕事に取りかかった。


「さ、元気になったなら帰った、帰った。次々患者はくるからね」

“熱が下がるまで出勤は停止、薬飲んだから2、3日で下がるから”
短い説明を受けたあと、私は追い出されるようにして病院をでた。


あ~あ。
セッカクのクリスマス・デート(?)だったのに。カチョーにまた迷惑かけちゃった。


もうすぐ会社はお正月休みにはいっちゃうし……
ヨシ。早くカゼ直して、大神さんにはキチンとお礼を言おう。
 
私はささやかな決意を胸に、まだ熱っぽい、気だるい身体を引きずって自宅に向かうのだった。
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