狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
全くナゲかわしい世の中だ。
私が朝からケナゲに自分磨きをしてるってのに。
 
特に男。

ほら今も、池の向こうを見てみなよ。

朝も早よから、ランニングのフリして女の子をナンパしようとしている男が………

ん?


目を擦り、その光景をもう一度よく見直した。私の視力は両眼2・0である。

んんんっ⁉


チワワの散歩をしているスレンダー美女に、声をかけようとした背の高い、ランニング姿の男。パッと見かなりスタイルいいな、と思っていたら……

ナンパ男……うちのボスじゃん‼

 
うわあ…サイテー。

ギトギトの下心とは裏腹に、
超爽やかスマイルでニコニコと美女に近付いて、
今にも声を掛けようとしてる。


ヨーシ!見てろ。


「あっれぇ、大神カチョーじゃないですかぁ!オオカミカッチョ~~」

私は対岸に向かって、ぶんぶんと大きく手を振った。

不愉快そうに行ってしまった美女を名残惜しげにチラと見て、彼はこちらに走ってきた。

へっへ~ん、ザマミロだ。

「いやあ、奇遇でふねぇ」
「お前こそどうした。何やってんだ」
彼は私の隣に腰掛けると、憮然として尋ねた。

「ヤダなあ、見たら分かるでしょ。
美容と健康のためのランニングですよ。
…あ、もしかしてカチョーも?
はっはあ、サテはそろそろ
“メタボの気になるお年頃” ってやつですね」
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