狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
時すでに遅し。
彼は大声で私を呼ぶと、コイコイと手招きしている。

ヒイイッ…シバかれる…

逃げるのを諦めた私は、死刑宣告を受けた罪人のようにフラフラと彼の傍らに立った。

さっきの彼女が、薄く剃った眉を潜めた。

「大神サン、その娘は?」
「ごめんっ、瀬口さん」

「⁉」

叫んだ彼は私の肩に手を回し、グイッと自分に引き寄せた。

「俺、今夜はこの娘と約束がある!」

そういって彼は、さっき彼女とチューしたまんまの唇を、思いっきり私の頬に押し付けたのだ。

「んぎゃ…ぁう⁉」

「お……」
目を白黒させてる彼女に、同じく目を白黒させる私。

やがてブルブルと肩を震わせて、彼女はキッと彼を睨んだ。

「…大神さんの……大神さんの…」

次の行動が予測でき、私は思わず目を閉じた。

ドスッ。

「うごっ…っ…」

鈍いイヤ~な音がした。

見事な下段正拳突きが、彼のミゾオチにキマッたようだ。

「バカ~~~~‼‼」

その場にヘナヘナと崩れ落ちた彼を振り返ることなく、彼女はどこかへと駆け去った……
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