狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
これじゃあいけない。午後には電気屋さんも来るっていうのに……
私は気を取り直し、一々じっくり見ないように、セッセと手を動かしていく。

と……

あれぇ?これはもしかして。


最後の1枚、箱の底に隠すようにしまってあった白シャツに、見覚えがあった。

思わずそれを広げてみると、左胸のポケットに薄く残ったオレンジ色。

ああ。
これは、私達の始まりの日の証(シルシ)、出会い頭の衝突で、彼の左胸に私がつけたキスマーク。
安物のリップが災いしたのか、クリーニングでも落ちなかったと、後で散々文句を言われたっけ。

…カチョーったら。
こんなもの、捨てずに取ってたなんて。

思わずクスッと笑みが漏れた。

あの日の彼の、オニのような形相は今でもハッキリと覚えてる。

何せ出会いの第一声は
『何だテメエは』
だもん。

不思議なものでその彼が今や私のダンナサマ。

…………
正直、まだ実感が沸いてこない。

ここ数ヵ月があまりに急すぎたせいか、夢を見てるだけって気がしてる。

これから私、本当にずっとカチョーと過ごしていくんだよね…
 
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