狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
「貸せ」
彼は私からそれをバッと取り上げると、返事を打ち込みはじめた。

「だ、ダメですよ~、返してっ」

しかし、彼は打ち込みを終えるとそれを私の手の届かない高い吊棚に上げてしまった。

「もう………何て打ったんですか?」
「ヒミツ」

取り返すのを諦めた私が、ジロリと横目で睨むと、嬉しそうにニヤッと笑う。

どうせロクなことじゃないだろうな…フウッとため息をつく私。


と、彼がのっそりと腰を上げた。

「さて……そろそろいかなきゃ。
45分からお得意先の面々と会食なんだ」

彼を追って玄関に向かう。

「ずっと忙しかったし
着いたばっかりで、君も疲れてるだろう。無理せずにゆっくりしとけ。片付けは俺が帰った後で一緒にやろう、な?」

「う…ん…」

1度、軽く私に口づけてからドアを開けかけ、その姿勢のままピタッと止まった。

「?」
「それともうひとつ…忘れ物…」

クルリと私を振り向くと、
サッと唇を私の左耳に寄せる。

そうして、ドギマギしている私に大好きな甘いテノール、優しい声で囁いた。

(愛してる)

頬にチュッとキスをしてから、私に顔を見せないように、サッと背を向けてにドアの向こうに消えていった。

“いってらっしゃい”の掛け声も忘れ、ポーッと頬を押さえた私。



この人ってば本当に


こんなに甘い人だったのだろうか……
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