狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
ムクれているところに、当人の大神さんが戻ってきた。

「タダイマっと。
…あれ?どうした、ブスがますますブスになるぞ」
笑いながら、丸めた会議資料でポンと肩を叩く。
「‼⁉」

私は反射的に飛び退いて、両腕でバッと身を庇った。
あれ以来クセになっているのだ。

「……別に取って喰いやしないよ。
赤野さんに手ぇ出すと、流血沙汰になるしな~」
フンと鼻で笑い、大神さんは席についた。

「なっ…!」
真っ赤になった私に、幾人かが含み笑いをしている。

コンニャロメ。
若手男子ネットワークで何を言ってるか知らないが、私が凶暴な女だと思われちゃうじゃないか。
稀少なラブチャンスが減ったらどうしてくれるんだ!

まあしかし、これもスッタモンダの効果なのか。
正体を知ったその日から、私の彼へのニガテ意識は不思議とすっかり消え失せていた。

「あ、赤野!今日の資料、また部長の名前間違えてたろっ」
「はひっ!」

ま、恐いのは相変わらずなんだけどね。


……とまあ、そんな感じで。

パワハラ上司にも、課にもすっかり慣れた私は、中々快適な職場ライフを過ごせるようになっていた。
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