狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
「赤野遅い!」

いつもの風景。
始業開始のベルと共に課内に飛び込んだ私に、課長の怒声が即届く。

念のため。
“課長”とは、1年目のイヤミ(伊丹)課長ではありません。

「スミマッセーーン、オオカミ課長‼」

大神秋人、28歳、独身。

……コイツだ。


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忘れもしない、あれは3月末のこと。
わりと大きな会社であるここは人事異動の季節で、話題といえばその話でもちきりだった。

下馬評では、9月のプレゼンに加えて社員の業績 を称える『ベストプラクティス社長賞』を2回も貰った大神リーダーは、経営戦略のような、ブレイン的な部署に異動するんだろう、と専らの噂だった。

そして来るべき内示発表の日。

予想どおりに彼が課長に呼ばれた彼が、嬉々とした表情で戻ってきたもんだから。

マチガイない‼

一人合点した私は、真っ先に彼に駆け寄った。
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