君色キャンバス

 中野の心には俺とは違う言葉を持っている。 

 潔癖すぎるゆえに生まれる言葉の中には、言い表しようのない純粋さが溢れている。


 その詩に俺は時間を奪われた。

 
 何分も、何時間もその詩を見続け、俺は何かに押されるかのように制服を着て、学校へと走った。

 学校からはかなり近くて数分も走ればすぐに学校に着き、自分の教室へと向かう階段を猛スピードで駆け上がる。

 そして勢いよく教室の扉を開くと、みんなの視線が一気に俺に集まる。

 その視線をわざと気づかないフリをして自分の席へと腰を下ろす。


 どうやら今の授業は数学らしい。

 
 絵に集中していたせいで、授業がかなり進んでいた。

 見慣れた公式からかけ離れた文字が羅列している黒板を見た。


 だけど教科書をパラパラと捲ればすぐにその内容が頭に入る。

 俺は昔からそうだった。
 
 授業なんて数分で聞けばその1週間の授業をすぐに習得し、いつもつまらない授業を繰り返していた。

 だけど授業に集中していれば、絵を描きたい衝動からは何とか避けられる。

 そう思って高校へと進学したものの、相変わらず授業は淡々と進んでいて色褪せている。
 
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