君色キャンバス
真っ白なキャンバスに吸い寄せられるかのように再び向き合う。
目を閉じ、神経を研ぎ澄ませる。
開いた瞬間、俺の時間が始まる。
手先が俺の判断でガラリと変わる。
その瞬間がたまらなく今を生かす。
蘇るのは過去か、未来か。
曖昧な中間地点があまりにも空疎だ。
現実なんか下らない。
それでも俺は今、絵を描けている。
それだけで何でこんなに心が弾むんだろう。
俺はもう一度絵を本気で描きたいと思えた。
そこには紛れもなく中野の存在があった。
中野の詩に癒され、そして生きる意味の深さを知り、また再びこんな想いで絵を描ける日が来るなんてあの日の自分には予想がつかなかった。
暗い闇が俺を激しく襲う時、誰かに痛みを知って欲しくて――何度闇に失望しただろう。
俺は今を生きる。
過去を生きてはいけない。
進む。
命ある限り、明日もあるのだから。