柚時雨
「奏ちゃんが……好き」
それは、何の前ぶれもなく
突然発せられた言葉だった。
一層強さを増した雨が
目の前の現実を幻想に変えそうだ。
でも、現実は真実であって
嘘にも何にも変えられない。
夢であって欲しくても
それは虚しく雨音に消される。
目の前で涙ぐむ里奈が
幼なじみという関係を突然
消そうとしているように見えた。
……そんな俺は、最低。
「ずっとずっとずっと
好きだったのに……あたし…」
とうとう泣き出した里奈は
一気に昔に逆戻したようだった。
「…あたし、奏ちゃんがね……
恋愛対象として…見ていないのは
知ってたし…。それにっ」
途切れ途切れのかすれた声が
傘に落ちる雨粒のノイズで
聞こえなくなりそうになる。
でも、肩を震わせる里奈の声は
どこか力強くも聞こえた。