柚時雨



 「えっ……?」




 無言で俺に傘を押し付ける里奈。

 涙で潤んで、赤くなった目は

 俺を強く見つめる。




 「早く行きなよ!」


 「ちょ、里奈っ?」



 里奈が、俺の体を押す。



 「いいから!あの子のとこ行って!」


 泣き叫ぶように声を荒げる里奈は

 雨でずぶ濡れになっている。

 俺よりもひどく濡れている。


 だが、里奈は俺をジッと見つめ

 「早く!」と叫ぶ。



 俺は、どうしたら良いのか

 本当に分からなかった。



 だけど、里奈が何度も何度も

 行けと言って泣きわめく。


 そんな里奈を見て

 胸を締めつけられる思いだった。




 でも、俺は里奈を見て

 大きく頷いた。




 「里奈……ありがとう。
  ホントにごめん」





 俺はそう言うと


 ゆい子の元へ、全力で走った──





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