柚時雨
それから、身支度をして
学校へ行くぞ!と気合いを入れて
外に飛び出すと
もうすでに、雨がぽつぽつと
厚い雲から降っていた。
「マジかよ……」
母にでたらめを言った
罰かもしれないな。
灰色の空を見上げれば
次第に雨足は強くなっていく。
一旦家に戻った俺は
傘立てにさしてあった傘を
テキトーに抜き出して
急いで外に出た。
深緑色の地味な傘。
どんよりとした雨雲。
いつもなら気分も落ちて
ベタつく体が嫌になって
機嫌を損ねていただろう。
だけど今思えば
この日の雨は、俺にとって
いちばん忘れられない
最高の雨だったのかもしれない……