カワイイ子猫のつくり方
その後千代にも手伝って貰い、家中を探し回ったもののミコは見つからなかった。


朝霧はリビングのソファにどっかりと座ると、大きく溜息を吐いた。

(窓が開いている場所はなかった。ということは、やはり親父が家を出る時に一緒に出た可能性が高いか)

そして、そのまま外を走っていったか、もしくは…。

だが普通に考えて、ただ外へ行きたかったというのとは違うと自分の中で確信があった。

外へ行きたいだけなら、昨日ベランダの窓を開けておいた時点で出て行っている筈なのだ。

(だが、アイツは行かなかった)

自分が念を押して「千代が悲しむぞ」と言ったことが効いたとは思ってはいないが、何にしてもアイツは出て行かなかったのだ。

(でも昨夜の様子は、どこか…何かを迷っているようだった…)

ウロウロと落ち着かない様子で。

抱き上げて撫でてやると、不安げな瞳をしていて…。


もしかしたら、あの時から出て行くことを決めていたのかも…なんて。

(猫に対して考えるような事じゃないよな)

我ながら己の考えに苦笑が漏れる。

(でも、それ位アイツはどこか人間臭いところがあった…)


そして、辻原に対する執着。あれはいったい何なのか。


辻原の家では猫は飼っていないというし、アイツは野良に間違いはないのだろうけれど。

ただ『助けて貰ったから』というだけではない、何か繋がりがあるような気がしてならなかった。
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