カワイイ子猫のつくり方
(…こうして思い返してみても、やっぱりアイツの行動は違和感だらけだよな)


初めて会った日、辻原と一緒に意地でもついて行こうと救急車に飛び乗っていたあの必死な様子も。

土地鑑も何もない俺の家から、かなりの距離がある筈なのに学校まで平然とやってきたことも。


(そして極め付けが、人の言葉をも理解する猫、か?)


思い返せば返す程、『何故?』『どうして?』『どうやって?』そんな疑問は尽きない。

それは知能や運動能力が異常に高いだけなのか、それとも…?


(…その割にカラスには捕まってたけどな)


助けた時のミコの呆然とした様子を思い出して、朝霧はクス…と小さく笑った。


(本当なら、辻原に話が聞ければ何か分かりそうなものなのに、な…)


未だ目を覚まさないという彼女のことも流石に気になっていた。

第一発見者という手前、何かあっては後味が悪いというのもあるが、本当はそれだけじゃない。


(お前がいないと、つまらないんだよ…)


気付いてしまった。

思いの外、自分の視線が彼女を追っていたことに。


いつもいたその場所に、アイツがいない。

それがこんなにも気持ちを重くするなんて。


(ていの良い退屈しのぎ…とか言うと、アイツは怒るんだろうけどな)


純粋にただ、彼女の笑顔が見たい。そう、思った。


(こんな気持ちになるなんて世も末だな…)


でも、仕方ない。

本当にそう、思ってしまったのだから。



夢の中で微笑む彼女の姿が、あまりに眩しかったから…。





そして、朝食を終えた頃。

父親から一本の連絡が入った。

それは…。


気付かない内にミコが荷物に入り込んでいて、うっかり病院へ連れてきてしまったというものだった。


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