カワイイ子猫のつくり方
一方その頃…。


実琴は昨夜から考えて考えて、練りに練った計画を遂行中であった。

何とか自分(の身体)が入院中の病院へ潜入することに成功したのだ。

(とりあえず潜入したのは良いものの…。この後どうしよう?病室が何処だか全然分からないよっ)

ロビーの受付カウンターの下へ潜りながら周囲を伺う。


実は、この病院へ来るのは初めてだった。

実際に来るまで、どんな規模の病院かさえ全く把握していなかったのだが、それでもとりあえず来てしまえば何とかなると、たかをくくっていた。

だが、そんな己の考えの甘さを今痛感している。


(お…大きすぎだよ、この病院っ!)


世襲制だの何だのと話していたから、流石にもう少しこぢんまりとした病院を想像していたのに。

だが、救急搬送された先の病院である以上は、やはりそれなりの大きさを覚悟しておくべきだった。


(こんなに大きくて綺麗な病院の院長ご子息だったなんて。住んでる世界の違いを感じちゃうな…)


片側全面ガラス張りの広々とした吹き抜けのロビーには沢山の患者が来院しているが、窮屈感などは皆無でゆったりとした明るい造りになっている。

そこを行きかう人々を、カウンター下の隙間からそっと眺めながら実琴は遠い目になった。


(朝霧のお父さんにも悪いことしちゃったな。でも、こうでもしないと来れなかったし…)
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