カワイイ子猫のつくり方
もともと動物は好きな方だ。

猫も一時期飼っていたことがあるし、特に問題はない。


(だが、今朝のあの目覚ましは強烈だったがな…)


夜、目が覚めるとアイツは寝床から起き出していて。

それでも動いてる気配がなかったので周囲を見渡してみると、何故か窓際で眠っていた。

寝起きの俺は、それこそなんとなくの気紛れでその猫を自分のベッドへと連れていくと、一緒に横になったのだが。

何故かアイツは寝起きざま驚いたように、ぎゃーぎゃー言っていた。(…ように聞こえた)


(思い出せば出すほど、ヘンな猫だ)


そんな反応をする猫なんて知らない。

思わず可笑しくなって、人知れず笑みをこぼした。

学校へと向かう道のり。周囲にすれ違う者は今いない。


(結局、アイツはどうしたんだろうか…)


家を出る前、アイツは夜いた時と同じ窓台の上からまた外を眺めていた。

それこそ、寂し気な瞳で。

そんなことで気に掛けるのも、らしくないとは思いつつも。


「外へ行きたいのなら行けばいい。だが、此処を出た以上は自らの力で生きていく覚悟を決めろ」


そう言って、部屋のベランダ側の窓を少しだけ開けておいた。

ベランダを伝って行けば下に降りられないこともないだろう。


実際、そんなことを猫に言っても分かる訳はないのだけれど。

でも、アイツならそんな言葉も理解出来るような気がしたのだ。


(それこそ、らしくないってな…)


朝霧は自嘲気味に小さく笑うと、学校へと向かうバス停を目前に、表情を引き締めた。
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