カワイイ子猫のつくり方
「ところで…学校生活の方はどうだい?楽しんでるかい?」

重い話題から切り替えるように朝霧の父が話を振ってくる。

「まあ…。普通です」

「普通…」

「………」


(そ…それで終わりっ!?会話終わっちゃったじゃん!)


朝霧の足元にいた実琴は、その相変わらず無表情な横顔を見上げた。

そんな対応に朝霧父も苦笑いを浮かべながらも根気良く話を振り続ける。

「まぁ『普通』って大事だよね。普通に学校生活を送れるのは良いことだよ。伊織くんは勉強も頑張ってるみたいだし。充実してるって意味かな」

そこまで言った所で、それを聞いていた千代が横から口を挟んだ。

「坊ちゃまは一年生を首席で終えていますものね。とてもご立派ですわ」

「そうか。それはまた凄いね」

「…たまたまですよ」


(うわ…昨年の学年首席って朝霧だったんだ?…知らなかった…)


実琴は珍しいものを見るように、朝霧を見上げた。

「勉強も勿論だけど、学校生活で得るものって沢山あるからね。学生のうちに色々なことに挑戦したり、エンジョイして欲しいなぁ」

「…エンジョイ…ね」

朝霧は思わずフッ…と息を吐くように笑う。


(あ…。今の朝霧、ちょっとブラック入ってる…)


実琴は、その冷たい笑顔に顔を引きつらせた。

だが、父親はその変化には気付いていないようだ。

「そう言えば、伊織くんってさ…」

「………?」
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