彫師と僕の叶わなかった恋
出会い・・・・8

他の友人に頼みに行くのに早くに出て行ったのかなと考え

朝ご飯を食べようとして、テーブルの上を見ると置手紙があった。

そこには“ありがとう”と書いてあったのっで、僕はやっぱり早くに帰ったんだ

と一安心し朝ご飯の用意をした。

ふとタンスを見ると、タンスの一か所が微妙に開いているのが目に入った。

“あれ?何であそこだけ不自然に開いているんだろう?”

と思いタンスを見に行ってみたが、その時ちょっと嫌な予感がしていた。

と言うのは、昨日給料日で、家賃・光熱費を残し8万円を下ろしたのと

次の彫代8万円を入れておいた引出しだったからだ。

本当はこの彫代だけでも貸してあげれば良かったのかも知れないけど

僕は由利の話を聞いている時に、あの繁華街で出会った時のさげすむ様な

由利の目を思い出していたしそれでいて困った時にだけ泣きついて来る

都合の良さを心のどこかで許せず、躊躇ってしまったのだ。

でも、いくら困っているとは言え由利は人の物を盗むなんて事は出来る人では

無い事を僕は、分っていたので、引出しをピタッと閉めた。

ん、何か引出しの中に違和感があった気がする。

Tシャツが一枚変な形に折れ曲がっている。

僕はTシャツをたたみ直そうとTシャツを取り出したが、ふと見ると

そこに有った筈の彫代と食費の入った二つの封筒が無くなっている。

慌てて全てのTシャツを取り出し、畳んで有る物を広げ

タンスの中身を全て調べたがそこには何も無かった。

もう由利が持って行ったとしか考えられなかった。

その時は、怒りよりも切なさから、こんな事になるんだったら

あの時ちゃんと貸してあげれば良かったのかな

と後悔をしたが、今はそれ処では無かった。

次の給料まで何も食べられない。

段ボール買いしてあるカップ麺が有るから全く

食べられない訳では無いがほぼ一日一食になる。

しかし、TATTOOの方は延期してもらうしか無い。

僕は相当パニクっていた様でスタジオに電話して

延期依頼をすれば良かったのに律儀にも渋谷まで行ってしまった
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