例えば星をつかめるとして

トントン、と、音が鳴る。

夕食とシャワーを済ませた私は、自分の部屋で勉強をしていた。最初は、お母さんが何か用事があって来たのかと思ったのだけど、どうも違う。音の鳴っている場所が、違う。

……窓?

勉経机の、ちょうど後ろ側。そっちから聞こえたのだけど、その方向にあるものはベッドの他は窓しかない。夜なのでカーテンは閉めているから、様子はわからないのだけど。

ここは二階の部屋で、窓の前には枝のある木などは生えて無かった気がする。風とは思えないし、石でも投げられているのだろうか。

そう言えばこんなような遊び、昔したな。トントントン、何の音? 風の音。トントントン、何の音? 雨の音。トントントン、何の音? ──おばけの音! そうしたら一斉に逃げ出して、鬼ごっこを始めるんだっけ。

まさか、おばけということは無いだろうけど。そんなことを考えながらカーテンを開く。そして、ぎょっとした。

「──ひっ!」

思わずそんな声が出る。

目に入ったもの、それは、紛うことなく、窓を叩く手がぼんやりと宙に浮いている光景だった。

慌ててカーテンを閉める。一瞬だけど、しっかり脳裏に焼き付いてしまった。藍を溶かしたような夜空をバックに、薄明るい星明かりに照らされて、ぼんやり浮かび上がる白い手。

心臓がばくばく音をたてている。こんなの初めてだから、どうしたら良いのかわからない。今年初詣で買ったお守りでも握りしめれば良いのだろうか? 学業守だけど。
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