例えば星をつかめるとして

さらに混乱する私の前に、もう一度鳴る、トントントン、という軽快な音。

……もう一度、見てみようか。見間違いかもしれないし、念のため、念のために。

そっと、カーテンを開くと、残念なことに見間違いでは無かったらしく、依然手が浮かんでいる光景が広がっている。けれどよくよく見ると、どこか見覚えのある手のような気も、する。

骨ばっていて、色の白い、でも大きい手。

「叶多……?」

唐突に浮かんだ名前を呟くと同時、手のひらが見えなくなったかと思うと、下からぬっと浮かんできたのは、呼んだその人の顔。

窓の外、いや、ここは2階なのだから空中なはずなんだけど、とにかく窓の外に見える叶多は、もう一度窓をこんこん、と叩いた。

「えっ……な、何やってんの!?」

さっきとは違った意味で驚きつつ、慌てて窓を開ける。すると想像した通り、いつかのように空中に浮いた叶多が、私の目の前でにっこり笑った。

「こんばんは。驚いた?」

そう言って楽しそうに笑う彼は、仕掛けたいたずらが成功したことを喜ぶ子供のようですらある。私はどうにか混乱を鎮めて、とりあえず彼を部屋へあがるよう後ろへ下がった。
< 144 / 211 >

この作品をシェア

pagetop