例えば星をつかめるとして
鼓動をどうにか落ち着かせて、私は言う。思わず、叶多の唇が触れていた額を押さえた。叶多の加護が、あるのだろうか。あったら良いなと思った。つかめない遠くの星よりも、燃え尽きる直前の流星の光よりも、何よりも心強い。
「はい、着いたよ」
そんなやりとりをしているうちに、家までついていたらしい。私の部屋の窓の前に浮かんだ叶多は、私を部屋の中へと導いて、私の足が地面に着いたのを見届けると、手を離した。温度が離れることが、少しだけ名残惜しい。
「突然夜遅くに連れ出してごめんね」
「ううん、楽しかった。ありがとう」
「遅くしたのは僕なんだけど、もう今日は寝るんだよ」
「わかってるって」
繰り返し念押されて、私はくすりと笑った。
「ほんとに? ……じゃあ、おやすみ」
「おやすみ。今日はありがとう、叶多」
おやすみ、というやりとりをするのは、少しだけ新鮮で気恥ずかしい。