涙ーありがとうを君にー


「入るよ〜」

言うが早いか、
扉を開けるが早いか…

希衣が藤宮邸・凜と優花の寝室にあしを踏み入れる。
その後から瑠璃も部屋に入った。


「よお。瑠璃、おかえり」

凜が床から起き上がる。

「ただいま…

って、体大丈夫ですか?」

瑠璃が苦笑する。

「……問題ない。

年のせいで治りが遅いだけだ。

なんせ、
じきに五十だからな」

霄がにこやかに言う。

「ええ。

本当だわ。にへらにへらしてるから変な人達にばっさり斬られるのよ」

妻である優花にさえ、
嫌味を言われる始末…

「普通に心配してくれる奴はいないのかっ!!」

苦虫を噛んだ顔をして、
凜は言う。

「日ごろの行いが悪いんだろ」

とどめをさすかように希衣がきっぱりと言う。

瑠璃はそんな四人の様子を微笑を浮かべ、
眺めていた。


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