イケメン伯爵の契約結婚事情


 残されたエミーリアは、朝食後、メラニーとトマスを伴い久しぶりに屋敷内の探索をしていた。


「エミーリア様、もうお部屋に入りましょう」

「まだいいじゃない。メラニーのリハビリがてらよ。今は使用人と私しかいないんだもの。部屋に閉じ込められる理由はないでしょう?」


アルベルトもその側近も一緒に外出したことにより、エミーリア的には気分が軽くなっていた。
フリードは気を付けろと言ったけれど、屋敷に残った召使の多くがフリード側の人間だ。この状況で自分を狙ってくることはないだろうと思えたのだ。


「でもこんなところにまで」


一階の端、厨房のあたりまで来ていた。
すれ違う使用人たちはエミーリアを見ると一様に頭を下げるが、その視線に“なぜこんなところに”という疑問がありありと浮かんでいる。


「だって、しばらく探検してなかったし。そうだ。カールははいるかしら」


厨房を覗くと、白のコック服を付けたカールが駆け寄ってくる。エミーリアに軽く一礼した後、メラニーに土下座せんばかりの勢いで頭を下げた。


「侍女殿。本当に申し訳ありませんでした。自分が作った食事であんな目に合わせてしまうなんて」

「カール様、そんな、頭など下げないでくださいませ」


メラニーも慌てて駆け寄る。でないとカールは一向に頭をあげる気配がなかったのだ。


「そうよ。メラニーは無事だったんだし、いつまでも気にしないで。それよりいったいどんな食事だったの? その日は」


報告書はフリードに見せられていたが、カールから直接話を聞くのは初めてだった。

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