イケメン伯爵の契約結婚事情
畑に向かう道すがら、温室から出てきたカテリーナがふたりに気づく。
フリードが立ち止まって頭を下げると、近づいて来ようとしたが、アルベルトが手振りで屋敷に戻るように指示すると、素直に屋敷に向かう。
そのまま、フリードとアルベルトは小高い丘を登った。
紫色のその花畑は、遠目にはラベンダー畑のようにも見えたが、もっと大きな花だ。草丈が高く、フリードのひざのあたりまで伸びている。
風が吹いて順々に揺れてうねりを生み出す様子は、まるで波のようだ。
「これは、花や葉が枯れてから球根を収穫するんだ。滴形をしていて、焼いて食べると案外うまい」
「ではなぜ領土内に出さなかったのですか?」
「領土ではすぐに真似をする輩が多い。気候が近いから量産が可能だからだ。だから、そちらに流通させるより、他領土に回した方が利益が得られると思ってのことだ」
「ではなぜ正直に“カマス”という名で出荷しないのですか? 帳簿には花類と記載されていたような気がしますが」
「帳簿にはな。どこもそんなもんだろう。花類や根菜類。季節ごとに色々なものができるのに、いちいち品物名までかかんよ」
「それはまあ、そうですが。……では、金額の件は? 通常の作物の倍の値段が付くほどのモノとは思えませんが。これだけじゃなく、こちらのデス・カマスも出荷しているから、高額で取引できるのではないですか?」
真面目な顔で問い詰めるフリードに、アルベルトはゆっくり口元を緩ませ、笑う。