イケメン伯爵の契約結婚事情
「だとしたらどうする?」
「え?」
「もしそうだとしたら、お前は俺をどうするつもりなんだ?」
「もちろん、責任を取っていただきます。毒を生成するのはそもそも不正です」
「でもそれで得た利益がこの領土を潤しているのだとしたら?」
きっぱりと言い放ったアルベルトは、むしろ堂々としていた。
「綺麗事では何もできんと言ったはずだ。何かを守ろうとすれば汚れるのは当たり前のことだ」
「俺は……」
フリードはここにきて、父のことを思い出していた。
もめごとが嫌いで、領土の管理は弟に任せ、自らは狩りにばかり精を出していた領主。領土のことは誰よりも愛していたかもしれない父、だけど彼は確かに何も守れなかった。
『この土地を愛して、発展させていく。お父様が本当にしたかったのはきっとそういうことよ』
父には出来なかった。美しいものだけを選び取り、他から逃げたから。
愛するだけでは発展などさせられない。
だからと言って、毒の栽培が正しいとは思えない。それはこの土地に泥を塗ることと等しいのではないか。
『あなたがお父様の遺志を継げばいいわ』
エミーリアの言葉が、いつの間にか自分の中心で核のような存在になっている。
父のやり方が正しいとは思えない。愛するだけで責任を放棄して、面倒だけを叔父に任せた。
叔父は土地を栄えさせたが、そのやり方が間違っている。
だから領主になりたい。
自分の理想を形にするために、美しい土地を清廉さをもって発展させるために、自分が立ちあがりたいのだと、フリードは改めて気づいた。