イケメン伯爵の契約結婚事情

「……俺の前妻は家柄などを考え、叔父上が連れてきたんだ。いつも怯えたような顔をしている大人しい女でな。気が合うわけではなかったが、しょせん政略結婚だ。世継ぎさえ産んでくれれば問題ないと思っていた。それでもしばらく子には恵まれず、ようやく身ごもったことが分かったのが四ヶ月前だ」

「え?」


フリードの前妻は三ヶ月前に亡くなったと聞いている。それでは、お腹の子も一緒に流れたということなのか。


「その頃、彼女は体調を悪くしていてな、食事には気を付けていたはずだが、ある日彼女は喉をかきむしるようにして腹の中のモノを吐き出し、死んだ。おそらく毒を盛られていたのだろう。しかし、その日食べた食事を調べても証拠は出ず、結局病死ということで処理したが、……俺は犯人は叔父上じゃないかと踏んでいる」

「そんな」

「……俺に子ができて困るのは叔父上だけだ。直系が続けば、彼は一生日陰で終わっていくからな」

「直系?」

「本来なら父の跡は叔父が継いだっていいんだ。ところが、彼は妾腹の子だからと祖母が反対した」


そんな裏事情があったとは、とエミーリアは唸る。
アルベルトの妙に暗い瞳を思い出し、彼全体を覆う影の正体のようなものを見た気がした。

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