イケメン伯爵の契約結婚事情
父が領主の間、実権を握っていたのはアルベルトだ。
フリードの父は政治的な才能のない男だった。狩りが好きで、難しいことはすべて妾腹の弟に任せていた。
フリードはそんな父を軽蔑し、反抗していた。黙々と仕事に打ち込む叔父の方がずっと立派に見えたし、尊敬もしていた。
父親が死んだ時も、フリードはぼんやりと「ああ死んだのか」と思っただけだった。その頃には両親は離婚していたので、父の死を悲しむ者はほとんどいなかっただろう。
これからは叔父の時代が来ると思っていたし、自分は叔父の片腕になれると思っていたのに。
予想とは裏腹に、領主に任命されたのはフリードだった。そしてそうなって初めて、叔父の違った側面が見えてきた。
「……俺は、無能な領主になる気はありません」
フリードは目を伏せて言った。過去の自分を思い起こすと胸が痛い。
「そうか。しかし新しい奥方の相手もしてやればどうだ。変な噂が立っているぞ」
「知ってますよ。トマスはあれの馴染の従者なだけです。エミーリアに何かあれば命に代えても助けるだろうと思うからこそ、トマスをつけているのんですよ。叔父上が心配なさるようことはありません」
「そうか。しかし女心は我々男の手には負えんぞ? いつの間にか足元をすくわれることがある」
自分は妻を放ったらかしにしておいてよく言うものだと内心で思いながら、フリードはいっそ居丈高に笑う。
「経験談ですか? 俺とエミーリアは大丈夫ですよ」
契約ですからね、と心の中で呟く。
余裕のフリードを、アルベルトは呆れたような目つきで見つめた。