もう一度君に会えたなら
「分かった。どれくらい?」
「とりあえず来週末まで様子を見てみるわ。それで何もなければやめるから」

 わたしはお母さんの提案を受け入れることにした。一週間、川本さんに会えないのは辛いが、それは仕方ない。

「あの人とお父さんの間に何があったの?」
「それはわたしの口からは言えないわ。ごめんね」

 お父さんもお母さんも、川本さんも理由を知っていて口を閉ざしている。それは犯罪に関わる何かを庇っているのだろうか。

 わたしは川本さんとずっと一緒にいたいと思っている。だが、あの様子を見る限り、わたしの彼氏が川本さんだと知れば、付き合うことを反対するだろうというのはあらかた推測できた。



 それから一週間、わたしはお母さんと一緒に登下校していた。休みの日も親がついてくるというため、大人しく家にいることにした。榮子にも川本さんにも本当のことは言えず、ただ体調が悪いから親が送り迎えをしてくれているという嘘をついてしまった。もちろん、川本さんと顔を合わせる機会はなかった。わたしの体調を気遣ってくれる二人に申し訳なく思いながらも、川本さんのお父さんが再びわたしの前に現れることはなかった。

 お母さんも過剰反応をし過ぎだと思ったようで、その次の月曜日からは一人で登校をしていいと言われるようになった。
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