もう一度君に会えたなら
「何か聞きたいことがあればわたしがきこうか?」

 わたしの気持ちが顔に出ていたのか榮子が心配そうに聞いてきた。

「大丈夫」

 わたしはできるだけ笑みを浮かべた。
 少しして江本さんが二人分のケーキセットを運んできてくれた。
 彼女は会釈をすると、戻っていった。



 わたしたちはケーキを食べ終わると、会計をしにレジに行くことにした。
 江本さんが会計をしてくれ、先に榮子が支払いを終わらせた。
 わたしも自分の分の支払いを終え、お釣りを受け取ろうとしたとき、彼女は思い出したように声を出した。

「太田さんに話があるんだけど、少し待っていてくれるかな」
「唯香に何を言う気なんですか?」

 先に支払いを終えた榮子がわたしと彼女の間に割って入った。
 彼女はそんな榮子の反応に驚いた様子もなく、さらりと答えた。

「少し話をしたいだけよ。彼女にとって悪い話じゃないと思う。少し離れたところで待っていればいいんじゃない? 一緒に聞いてもらいたい話というわけじゃないし。少しだけ休憩をもらうようにするから」
「どうする?」

 わたしは榮子の問いかけに首を縦に振った。

「分かりました。外で待っていますね」

 聞かないと後々気になってしまいそうな気がして、わたしは彼女の提案を受け入れることにした。
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