もう一度君に会えたなら
「ごめんね。つきあわせちゃって」
「やっぱり食べるね」

 申し訳なさそうに微笑む友達を見て、わたしは一つ飴を取り出し、口に放り込んだ。

 なりゆきでお店に入ることにはなったが、謝られるようなことは何もなかった。
 彼にこうして会えたのだから。

「無理に食べなくても」
「無理にじゃないよ」

 わたしは笑みを浮かべた。
 それから他愛ないやり取りをして、彼女と家の近くでわかれた。

 だが、いつものように友達とのやりとりに集中することはできなかった。
 原因はたった一つ。あの人のことが気になっていたかためだ。

 あの人は何歳くらいなのだろう。

 高校生か大学生か。大人っぽい顔立ちはそれ以上にも見える。
 わたしはお店でもらったレシートを取りだした。だが、そこにはレジを打った人が番号で表記されていた。どこの誰なのか全くわからず、わたしは短くため息を吐いた。
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