もう一度君に会えたなら
 わたしは店内を覗きこむと、ため息を吐いた。
 今日は「はずれ」の日だ。

 彼に出会ってから翌週の週末になっていた。
 あれから毎日コンビニの前を通り、彼が店の中にいるか確認した。

 平日は金曜日以外、彼を見かけることはなく、土日も夕方に入っていたようだ。

 遠くからそれとなく見るだけなら、そんなに問題はないはずだ。
 落胆を滲ませ家に帰ろうとしたとき、背後に人影があるのに気付いた。

 わたしは思わず後ろにのけぞった。
 そこには学ランを着たあの男の人の姿があったのだ。

「何か店に用?」

 わたしはすぐに答えられなかった。
 あなたに会うために毎日店を覗いていたなど言えるわけもない。

 彼はくすりと笑った。

「まあいいけど、噂になっているよ。毎日、店内をうかがう女子高生がいると」
「噂」

 さっと血の気が引いた。毎日彼がいるか確認をするので精一杯でそこまで考えが回らなかった。客観的に考えれば、かなり気持ち悪い人だ。

「自分に気があるとかないとか。変な誤解を与えたくないなら、あまり妙な行動はとらないことだな」
「気がある?」

 噂の本意を悟り、わたしはほっと胸をなでおろした。


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