もう一度君に会えたなら
「じゃあ、何か」
「用というわけじゃないの。ただ」
わたしはそれ以上の言葉を紡ぎ出すことができなかった。初対面の人に何かを感じて付きまとっていたなんてストーカー以外の何物でもない。そもそも彼がわたしを見て驚いたというのもわたしの妄想だったのかもしれない。
「俺は川本義純。高校三年」
わたしは驚いて彼を見た。
「まずは自己紹介でもしようと思ってさ。少しでも俺のことがわかれば言いやすいだろう」
「大田唯香です。高校二年」
わたしは彼のやさしさに甘えるように、自己紹介を済ませた。
「一つ下か。もっと離れているのかと思ったよ」
彼はそういうと、優しく微笑んだ。
幼いと言われたのかもしれないが、不思議と嫌な気はしなかった。
「高校三年なのにバイトされているんですね」
「いろいろと生活していくからにはお金がかかるんだよ。それに大学に行くかは分からない」
「ごめんなさい」
わたしの学校は当たり前のようにほぼ全員が大学に進学する。そのため、就職という進路を今まで考えたことがなかったのだ。
「謝る必要はないよ。父さんが前の仕事をやめてからはずっとそんな感じだから」
彼は明るく笑った。