もう一度君に会えたなら
 新しい携帯の番号を教えたとしても、また母親に知られれば取り上げられるかもしれない。それに川本さんに会わせないために母親がこうした策に出たなど言い出せるわけもなかった。

 わたしはこのまま川本さんに会えないのだろうか。
 そう考えると、再び視界が霞んできた。

 あのときとは違い、生きているので一生会えないはずはないのに言いようのない気持ちがわたしを襲う。

「大丈夫。わたしが必ず二人を会せてあげる」

 そう榮子は力強く頷いた。

「今日もおばさんは迎えにくるの?」
「そのはず」

「だったらわたしがおばさんに話をして、少しだけ二人で出かけていいか聞いてみるよ」
「でも、その間川本さんに会っているのが知られたら、榮子のイメージが悪くなってしまうよ」

 わたしの言葉に榮子は笑った。

「悪いイメージを持たれるのは嫌だけど、今のままの唯香たちを放っておけないよ。わたしにとっては唯香の幸せのほうが何倍も大事だもん」

「ありがとう。でも、きっと川本さんと隠れて会っても、お母さんたちはつきあってもいいとは言ってくれないよね」
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