もう一度君に会えたなら
「実のところ夏休みにでも、あの君と一緒に見た海を、もう一度見に行こうと思っていたんだ。少しだけ前倒しになってしまうけどね」
「どうして? 二年待ってくれるって言ったじゃない」

「詳しい話はそのときに話すよ。どうする?」
「もちろん、行く」
「日帰りは難しいかもしれないし、家の人にも言ったほうがいいかもしれないけど」
「絶対反対されるから、言わない」

「でも、それだと」
「いいの。お願い」

 彼はわたしにそう強く言われ、拒否できなかったのか分かったと告げた。
 わたしたちは待ち合わせ場所や時間のことを話し合って決めた。
 ほぼ始発に近い電車で出発することにした。

 そして、わたしは川本さんと別れ、榮子の待つお店に戻った。

「どうだった?」
「うん、連絡先の交換はできた」
「よかった。おいおい親を説得していければいいよ」

 わたしは頷いた。
 明日、わたしは川本さんと鎌倉に行ってからどうするんだろう。

 日帰りで帰るのか、それともどこかに泊まり帰宅するのか。
 選択肢はいくつかあるが、その後のことは川本さんも、わたしも何も言わなかった。
 お互いに流れに任せようと思ってたのかもしれない。

 だから、榮子には言わないことにした。
 きっと知れば彼女に重荷を背負わせてしまうと思ったからだ。

 わたしたちは母親と別れたショッピングモールに戻る。
 榮子はお母さんに電話をしていた。
 お母さんはすぐに迎えに来ると言い電話を切ったようだ。

「本当にありがとう」
「お礼を言うのは両親に認めてもらってからでいいんだから、気にしないで」
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