もう一度君に会えたなら
 お母さんとの約束の時間に駐車場まで行くと、瑤子さんが車から顔を覗かせた。

「瑤子さんが来てくれたの?」
「奥様は急ぎの用が入ったらしくて。まだごゆっくりなされますか?」
「うんん。帰るよ」

 仕事だろうか。
 今まで頑なにわたしの送り迎えをしていたお母さんの行動が意外な気がしたが、それだけ榮子と瑤子さんに信頼を寄せていたということかもしれない。

 明日の支度もしないといけない。
 そう考えるとゆっくりしている時間はないのだ。
 榮子も一緒に車で送ってもらうことになり、二人で後部座席に乗り込んだ。
 榮子の家の前で、彼女と別れ、わたしと瑤子さんが二人だけになった。

 瑤子さんがミラー越しにわたしを見て目を細めた。

「本当に唯香様は大きくなられましたね」
「どうしたの? 急に」
「どうしてでしょうね。そう思わずにはいられなかったんです」

 彼女はそういうと、少しだけ悲しそうに微笑んでいた。
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