もう一度君に会えたなら
「昨日、君のお母さんに相談したんだ。だめだと言われたら、ここにくるのは諦めようと。正直反対されると思ってたけど、意外にもいいと言ってくれたよ。ただ、さすがに二人で外泊させるのは気が進まないから、夕方までに来るようにする、と。さすがに日帰り出来るような距離ではないから」

「そっか」

 瑤子さんがわたしを送ってくれたのも、そういう理由だったのかもしれない。
 わたしはほんの少しだけ気が抜けてしまった。結局、親の手のひらの上であれこれしていたんだろうか。
 
「お母さんとはどこで待ち合わせているの?」
「この近くのホテル。二部屋取ると言っていた」

 どうやら六時過ぎに待ち合わせをしているらしい。まだ、時間はある。

「少しだけ散歩して帰ろうか。もうあのときの街並みも残っていないだろうけど、記念にね」

 そう歩きかけたわたしの足がふと止まる。
 振り返り、川本さんを見た。

「あのとき、別れ際に何を言おうとしたの?」
「別れ際?」
「もう一度、会えたらって何か言いかけたよね」

 川本さんは顔を引きつらせ、目を背けた。

「もう昔のことだから」
「今の時代にそぐわないとか?」
「まだ今の俺には重い言葉だからだよ。俺が自分の夢を叶えたときには言うよ。そのときは俺の言葉として」
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