もう一度君に会えたなら
※※

 わたしは障子をあけて入ってきた人を確認して、体を起こした。
 わたしの傍にいた女性がわたしを慌てて制した。
 小太郎様は慌ててわたしの傍に駆け寄ってきた。

 義高様と同じ年頃だった彼は、背丈も大人といっておかしくないほど背丈も伸び、大人びて見えた。

「無理をなされないでください。お体のほうはどうですか?」
「大丈夫。来てくれてありがとう」

 小太郎様はわたしを見て、心配そうな表情を浮かべた。

「お父様かお母様からあの話を聞いたの?」
「はい」

 彼は申し訳なさそうな表情を浮かべた。
 わたしの婚姻話が出て、それを拒んだのだ。

 結婚するくらいなら、自ら命を絶つ、と。
 そのことで周囲は一時騒然となり、わたしに必要以上の刺激を与えないように努めているようだ。

 だからこそ、彼をここによこしたのだろう。わたしは小太郎様を傷つけさせないと、義高様と約束をした。その約束を忘れないようにと言いたいのだろう。お父様たちの考えそうなことだ。

 彼は言葉には出さないものの、身代わりとして残った自分だけが生き延びたことを気に病んでいるのだ。

< 165 / 177 >

この作品をシェア

pagetop