もう一度君に会えたなら
 わたしは携帯を睨むと、ため息を吐いた。彼の連絡先を聞いて一週間が経過した。毎日時間があれば携帯をチェックするが、彼からメールが届くことはなかった。当然のようにわたしもメールを送れないでいた。
 そもそも彼になんとメールを送ればいいのか分からないのだ。
 いい天気ですねなんてメールを送ってもきっとうっとおしがられるだけだし、急に遊びに誘う度胸もなかった。

 やっぱりあのお店に行かないと言わなければよかった。
 自分の言動を後悔したとき、わたしの机に影がかかった。

「何難しい顔をしているの?」

 榮子はいたずらっぽく微笑むと、わたしの前の席に座った。

「悩みごと」
「で、誰からのメールを待っているの?」
「何でわかるの?」

「休み時間ごとに携帯を見ていたらね。さすがにわかるよ。わたしでよければ力になるよ」
「この前、すれ違った人覚えている?」

「唯香がじっと見ていた人だよね。もちろん」
「その人の電話番号を聞いたけど、メールも来ないし、送れないし、どうしたらいいかわからなくて」

 わたしは携帯を見つめた。

 昼休みだったこともあり、場所を中庭に移し、にっこりとほほ笑んだ榮子にコンビニで彼を見かけたのを含め、一連の流れを伝えることになったのだ。

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