もう一度君に会えたなら
 わたしはふと手元のプリントに視線を落とした。そして、何気なくそれを開いてみた。同時に血の気が引くのが分かった。

 ちょうど車が目的地に着き停車した。

「唯香? 降りないの? 学校まで行く?」
「ありがとう。おりる」

 わたしは慌てて車を降りるた。

「後で迎えに来ようか?」
「大丈夫。歩いて帰れるよ」

 お母さんはわたしの言葉に会釈し、すぐに車を走らせた。お母さんの乗った車がすぐに見えなくなった。

 わたしはプリントの最後の問題を解いてなかったのだ。
 翌週まで待ってもらえるということで、日曜日にしようと思っていたが、昨日は川本さんに会えたことでいっぱいいっぱいでプリントのことなど完全に忘れてしまっていた。

 長文を読み、空欄を埋めるもの、内容理解を問うものが最後の問題だ。

 英語は得意なほうだ。今からさっと読み、考えながら学校に行けば解けるだろう。そう思い、目を走らせるが、焦る気持ちが先立っているのか内容が十分に入ってこなかった。

「何やってるの?」

 わたしは聞き覚えのある声に顔を上げた。そして、プリントを握る力を込めていた。

「川本さん、どうしてここに」
「それより、プリントがくしゃくしゃになるよ」

 そう言われてやっと手の力を緩めた。





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