もう一度君に会えたなら
「この近くの本屋で問題集を買っていたんだ。で、たまたま君を見かけたというわけ」

 彼は手にしてた書店の袋をわたしに見せた。

「何かあった?」
「いや、あの、英語の問題が解けなくて」

 手を差し出してくれた彼に、プリントを渡した。
 彼はさっと目を通した。

「これって、問一はa、問二はb、問三はa、問四はc、問五はbだよね」

 わたしは驚き、プリントを受け取った。そして、彼の言った答えと問題を照合する。確かに合っている気がする。彼はわたしの比でないほど、すらすらと答えてしまった。

「これでも受験生だからね」

 彼は苦笑いを浮かべていた。
 今日も問題集を買っていたし、おそらく彼はかなり勉強をしているんだ。受験をしないと言っていても。
 わたしは口から出てきそうになった言葉を飲み込んだ。

「ごめん。俺が言ったらいけなかったね。これ、宿題だよね」
「そうなんですけど、今日出さないといけないもので、するのを忘れていて」
「俺がいうのもなんだけど、復習はしておくように」
「そうします」
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