HANABI


『具合が悪い』なんて言うから
てっきり保健室にでも連れて行かれるのかと思ったら

辿り着いたのは生徒指導室だった。


「はぁー、せせろーしかったのぅ。」

うるさいのは文化祭だからしょうがないでしょ、と思ったけど言わなかった。


というよりも、この状況を理解するのがいっぱいいっぱいだった。



「…先生、あの、」

「先生なんて呼ぶのやめんさい、気色悪いけぇ。」

何よ、いつも先生って呼べって言ってたくせに!


むくれるあたしを尻目に、粟生は慣れた手つきでカップにコーヒーを入れる。


「里見も飲むけ?」

「…いい。あたしブラック飲めないもん。」

「ほうか。」

その返事を聞いて、粟生はコーヒーを啜った。


静かな生徒指導室に、生徒達の笑い声がこだまする。
今は吹奏楽が演奏してるのか、時折楽器の音が風に乗ってあたしの耳に届いた。

粟生の耳にも聞こえてるはず。


「ところで、」と切り出した粟生はカップを置いてあたしに視線を向けた。


「あんな所でキスして、誰かに見られたらどーするんで。」

大騒ぎになるじゃろうが、と腕を組んだ粟生は呆れたように息を吐く。



…うぅ、確かに。

「すいません…。」


何か、あたし粟生に謝ってばっかりじゃない??




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