奏 〜Fantasia for piano〜
手の中には、奏からもらった鍵。
その光が柔らかく瞬いて、まるで鍵穴に差し込んでと言っているようだった。
扉の向こうには、一体なにがあるのだろう?
緊張とワクワク感と、少しの怖さを感じながら、恐る恐る鍵穴に差し込み、鍵を回した。
カチャリと小気味いい音がして、鍵を引き抜き、今度は丸いドアノブを握る。
ゆっくりと回して、引いてみたら……。
「あ、ここは……」
六角形のピアノ部屋だった。
幼いあの夏、森を抜けてきた私が辿り着いて、扉を開いたときに見た景色が広がっていた。
白く塗られたフローリングや壁板は、電気もついていない真夜中なので、深い青色に見えた。
その部屋を埋めるように、大きなグランドピアノが置かれている。
美しいメロディを奏でているのは、私と同じくらいの歳の可愛らしい少年で……。
おばあちゃんの家を勝手に抜け出して、迷子になっていた私。
涙が溢れたのは、人に会えたことに安心したからなのか……それとも、このピアノの音色に心が揺さぶられているからなのか……。
幼いあの夏に感じた気持ちを、今の自分の中に蘇らせていると、後ろから私の体を素通りして、小さな女の子が部屋の中に入ってきた。