君の幸せな歌を


◇◆


2日間のライブも、もうすぐ終わりのとき。アンコールを唱えるみんなの声に、あたしは心臓がどきどきしていた。

自分でとったチケットで、席は7列目のど真ん中。少し距離はあるけど、ステージは十分によく見える。


『来週のライブで、アンコールのMCの時間に結婚することをファンのみんなに報告したい』


あたしよりもきっと、冬和はもっと緊張してるんだろう。


ステージが再び明るくなって、場内から歓声が沸き起こる。ライブTシャツへと着替えたらしいメンバーが、それぞれの立ち位置へ歩いていく。


「今日は最高のライブでした! えー、皆さん本当にどうもありがとうございました」


冬和の深々としたお辞儀をした。ベーシストがこっそりと近づいて「さらに!」と冬和にマイクを向ける。高校時代から、冬和と仲良しな本間(ほんま)くん。


「今日は我々のボーカルから大事な発表がありまして」


客席がざわつき始めて、冬和はちょっと照れたように笑った。


< 11 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop