君の幸せな歌を


「……そうだ。それでね、お願いがあって」


曲が変わって、『Midwinter』のデビュー曲が流れ始める。またしても、冬和の顔つきが真剣になる。今度は何だろう。


「うん。何?」

「来週のライブで──」


そのお願いを聞いたあたしは、正直うなずいていいものなのかとても迷ってしまった。あたしは良くても、みんなはいいのかなあ。どうなんだろう。


「メンバーと事務所にはもう今日のうちに言ってあるんだ。事務所には反対されるかと思ったけど、あっさりOKもらえたよ。マネージャーはわりと怒ってたけど」

「あたしは……どうかなあ。冬和はどう思ってるの?」

「これまで支えてきてくれたファンの人たちに、できればブログとか文字じゃなくて直接伝えたい」


真っ直ぐな冬和の瞳に、あたしは笑いかける。


「……そうだね。あたしもファンの立場だったらそのほうが嬉しいかもしれない」


冬和のファン想いは有名だもんね。ちゃんと伝わるといいなあって思うよ。

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