君の幸せな歌を


◇◆


料理をしている間は、テレビをつけずに『Midwinter』のアルバムをずっと聴いていた。冬和の澄んだ歌声を聴いていると、穏やかな気持ちになれる。

せっかくのクリスマスパーティー。ささやかな2人だけのパーティーなんだもの。まして、冬和は疲れて帰ってくるのに。あたしが暗い顔はしてられない。


冬和からの《もうすぐ帰るよ》というメッセージを見てから、完成した料理をテーブルに並べていく。

高菜と豆腐の和風スパゲティにピザ。焼豚のリースサラダ。それからフライドポテト。あとはクリスマスケーキは、冷蔵庫の中。


鏡の前で笑顔を作ってみる。どうかなあ。うまく笑えるかな。


ガチャンと鍵の開く音が聞こえて、玄関まで急いだ。


「おかえり。寒かった? ……冬和?」


あたしの顔を見るなり、冬和は安心したように笑って、抱きしめてきた。


「月歌、いないかと思った」

「何でよ。今日、クリスマスやるって言ってたのに」

「すごく不安にさせただろうなって思ったから。でもいてくれて良かった」


バカだなあ。あたしと何年付き合ってるのよ。よしよしと冬和の頭を撫でた。


< 5 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop