君の幸せな歌を
「急にで、ごめん」
「びっくりしすぎて、涙出てこないよ」
「うん。指輪は2人で見に行こう。買って来ちゃおうか迷ったけど、そのほうがいいと思って」
笑っちゃう。笑っているうちに涙は出てきた。それでも笑った。
いいのかな。あたしが幸せをもらってばかりで。ついさっきまで不安だらけだった心が、幸せで満たされている。
後ろで聴こえているのは、ちょうどラブソングだった。
「あたしは冬和に何もあげれてないね。いつも、たくさん幸せもらってるのに」
「月歌がいるから、歌えるんだよ。家で月歌が待ってるって思うからがんばって仕事ができる。一緒にいてくれるだけで、僕はすごく幸せをもらってると思ってる」
かっこよくなっちゃって。高校生の頃の冬和が見たら、きっとびっくりするだろうね。あたしもびっくりするだろう。
こんな未来、想像していただろうか。別れるって思ってたこともあったのにね。
「あたし、何も持ってないよ? 女優さんみたいに美人でもないし」
「そんなの気にしたことなかったのに。やっぱりニュースのせいかな。僕にとっては、誰よりも月歌が輝いて見えるよ」
「……歌詞みたいな恥ずかしいこと言わないで」
「ほんとのことだよ」
冬和の澄んだ声が、耳によく響いた。