傍ら
「莉奈」

無理だと分かっていても聞かずにいられなかった。

「もう無理なんか」

四月の生温い風が吹き抜ける。

「無理やで」

莉奈の嗚咽混じりの声にとうとう涙が溢れた。

癒愛を莉奈に戻して車に飛び乗った。

最後に見つめた莉奈と癒愛はいつもと変わらないでいて、俺を見つめていた。

非現実的すぎて頭が痛い。

無意識の内に左手の薬指から指輪を抜き取って莉奈に預けた。

「癒愛が大人になったら渡して」

そう言う事だけが精一杯の俺は、最後に謝ることも礼を言う事もできなかった。
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