恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
「だったらやってみませんか、って誘ってくれたの。責任はすべて俺が持つっていうからつい甘えちゃって。秘書と特別班の二つのわらじを履くことができて今充実してるの」

あおいさんもあおいさんなりの世界があって、それを成し遂げたかったところで大上部長が察知して『カントク』を作り上げたってことなのか。
でも、この部署を作るにあたってそう簡単に作れるものじゃないだろう。
大上部長は御曹司か何かなのか?

「ちなみに、わたくしと大上部長は親戚だと勘違いなさってらっしゃったかもしれませんけど違いますわ」

「え、そう、なんですか?」

「大上部長はね、篠崎家の運転手の息子さんよ。子供の頃からしっかりしていてね、社長であるウチの父が親のように慕っていたわ」

子供の頃から秀才だった大上部長を社長が目をつけていたんだ。

「有能な能力をお持ちなのは、父親ゆずりなのかもしれませんわね。だから、遠くても近くにおいておきたいっていう気持ちでウチの会社に入れたんじゃないかしら」

満足そうに話すあおいさんをみて、やっぱり大上部長のことを好意的に思っているんだろうな、と思うとふつふつと二人の仲を聞き出したくなる気持ちがふくらんできた。

「あおいさんは、大上部長のこと、どう思っていますか?」

一瞬、あおいさんとの間の空気がとまる。
すぐにあおいさんは笑みを浮かべて、なるほど鋭い質問ねとつぶやいた。

「どうって? 信頼できる最高の上司ですけど」

「それだけですか?」

その言葉尻りをわかったのか、クスっと軽く笑った。

「好きよ」

「……そうですか」

か細い声でそういうと、あおいさんは笑い飛ばしてくれた。

「いやね、好きだなんて。人間性として好きという意味。大丈夫よ。あたくしには幼少期から婚約している男性がいますのよ。もちろん大上部長ではなく、同じグループ内のご子息ですわ。もうそろそろ日本に帰ってくるので、そうしたら結婚になるのかしら」

そういってあおいさんは照れながらバシバシとわたしの背中を叩く。

「まあ、安心なさって。心に秘めているだなんて、二人ともかわいらしいですわ」

「え? どういうことですか?」

「わたくしに聞くよりも直接聞いてみてはいかがかしら」

そういうと、あおいさんはもったいぶるように横目でわたしをみて含み笑いをした。
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